#12

正直、自分でなんだかわからなくなってきた。あと長い話書くときは、登場人物の見た目とか最初に確定しておかないと駄目だと悟った。

まとめ http://d.hatena.ne.jp/blackwater/19990101

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「確かに・・・」私は、驚きを顔に出さないように気をつけながら、それでも興奮に高鳴る胸を抱えながら言った。「副物理法則と魔法は似ている」
 副物理法則を説明することは困難だ。我々が普段、認識しているものを主物理法則と呼ぶならば、その関係は、テレビの主音声と副音声の関係に似ている。テレビの電波に主音声と副音声の情報が両方含まれているように、この世界は、主物理法則と副物理法則の双方を含んでいる。しかし、通常、テレビを見ている時には主音声しか聞くことができないのと同じように、通常、この世界は主物理法則に則っている。しかし、テレビの音声設定を変更することによって副音声を聞くことができるように、あるきっかけによって副物理法則がこの世界に発現することがありえるのだ。そして、それが私の『副物理学存在理論』の概要だった。
 エナメルが再び話をつないだ。
「『副物理法則は、普段、表に出てくる法則ではない。あくまでサブ的な法則である。しかし、だからこそ荒唐無稽がありえる』。でしたよね、先生?」
「そうだ。副物理法則は、自然が備えているとはいえ、通常は使用されることのない、いわば仮想法則にすぎない。未使用のコンピュータープログラムがエラーを起こさないように、未使用の法則がエラーを起こすことはない。それ故に副物理法則は荒唐無稽や矛盾を内包することができる」
「そして、一瞬だけ副物理法則を発現させることによって、その荒唐無稽や矛盾を現実のものにするのが魔法、だと?」
「恐らく。未熟なプログラムであっても一瞬だけ使用するならばエラーの可能性が少ないから、決して不可能ではあるまい」
「もしエラーを起こしたら?」
「きっと核爆発レベルのエネルギーが暴走することなってしまうだろうな」
「そう・・・」
 一瞬、エナメルはうつむき、憂いを含んだ表情を作った。しかし、それが何を意味していたかは私には分からなかった。
「それで、エナメル。君は副物理法則を研究してどうするんだ?」
 その私の言葉を聞いたエナメルは、一転、表情を明るくしたように見えた。
「決まってるでしょう。魔法と科学を融合させるのよ」(つづく)