雪国 (新潮文庫)

雪国 (新潮文庫)

かつて日本で一番偉い作家だったのは川端康成なんじゃないかな。
しかし、川端康成は好きじゃない。僕が師だと思っている太宰治と仲悪いし、その理由もなんか納得できるんですよ。川端康成は大雑把に言うと「生きる」ということをテーマとしてる気がしますが、太宰治は「信仰」がテーマだったりするんですね、根幹が。だから相性悪いんですね、たぶん。生きるのと信仰は似て非なるものです。
くるり岸田繁が「図鑑は音楽好きなら聞いてほしい。くるり嫌いな人でもいいアルバムだと認めざるを得ないと思う」と自作を評したことがありますが、この「雪国」はそんな小説です。川端康成嫌いでも、いい小説だと認めざるを得ないと思います。非常に美しい描写だし、登場人物の感情が迫ってくるようでいいですし、ゆっくりとしたテンポから勢いをもったラストシーンもよいと思うのです。
ちなみに現在、川端康成的ポジションにいるのが宮本輝だと思いますが、彼の小説に至っては、僕は読むことがほとんどできません。河3部作読んだぐらいで、あとの作品は沢山持ってるけど5ページぐらいしか読めないです。