デアドコイ

「このひとに見つめられると不思議な気持ちになる」
アレクサンドロス王の瞳の色は左右で違う。近衛兵長である彼、セレウコスは、主君のその眼に見つめられると、常に現実を忘れる。
実際、王は、まるで人間でないかのようである。不可思議な知性を感じさせる双眸を持ち、肌は、うっすらと、しかし無数に傷ついている。敵兵によるものか、あるいは戦場を激しく動くうち、自然についた傷かはセレウコスには判らなかった。